ずっと幸せであってほしいから

建て替えとリフォームで迷ったら

 人は、初めてその住まいに入る時に決意をもって住み始めます。
でも、長い人生の中で様々な環境の変化により大きく使い方も変わります。

現在、住んでいる住まい。使用に伴い劣化や不具合は当然の事『全く問題の無い』なんてことは無いと思います。特にここ数年のコロナ禍の中では、住まい対する関心が非常に高まり自宅での滞在時間が長くなり、コロナの特性上感染に対する対応が、異常なほどに高まり住まいをこうしたいとか、あーしなければと思うところばかりとなります。こんな時に、建て替えかリフォーム・リノベーションかを迷うタイミングが起きることがあります。それぞれにメリットやデメリットが当然有り予算が大きく影響するもの。今住んでいる建物の状況により「どちらかにせざるを得ない事」も起きうるのです。
今回は、その「どちらにしようか」の判断基準について見てゆきたいと思います。

建て替えとリフォーム・リノベーションの特徴

ここでまず、それぞれの定義や特徴について確認をしましょう。

建て替え

建て替えの定義
・既存の建物を取り壊し、更地の状態にしてから新たに建築すること
メリットやデメリット
・既存の制限としては、立地環境
・決まった土地の面積、向き、形
・災害対応
・不動産取得税や固定資産税の更新
・最新の住宅の性能や住環境
・予算が明確
・コストがかかる

リフォーム・リノベーション

リフォーム・リノベーションの定義
〇リフォームは老朽化や傷んだ部分を新築時の状態に回復させること
〇リノベーションはより使いやすく改善・改良して価値の向上を図ること
メリットやデメリット
・思いの継承
・固定資産税などの税金面が有利
・規模や内容にり住みながら工事が可能
・耐震性能等の構造的な制限がある
・建替え時の性能に及ばない
・暑さ寒さを追求はコスト高
・施工内容によっては工期が短い
・作業内容によりコストの調整が可能
すんなり、耐震性能や高性能住宅を望むのであれば、やはり建替えが一番だと思います。

最近では、社会情勢の大きな変化のより物価の高騰が著しく特に建築資材等も同じことで建築コストが跳ね上がる中、所得層によっては新築住宅の購入が難しい世代が増えています。また、新築を選択することにより高額のローンの支払いに追われて幸せな生活を犠牲にするくらいならリフォーム・リノベーションでコストを抑えるのもありだと思います。

その建物の年代による判断

歴史の歩みの中で建物は様々な影響を受けてきたと思います。
そしてその度に建物の特徴に手が加えられより高性能な安全な住まいへと進化を続けてきました。

昭和から平成への時代の流れの中で

・戦災による戦後の影響
・伊勢湾台風などの猛烈な風の影響
・頻繁に起きる巨大地震
・戦後の人口増加と高度経済成長時代

昭和から平成の時代にかけて特に戦争を期に住宅事情は大きく変化をしました。
高度経済成長期を起点にここを私の目線で1つの区切りとしてとしてお伝えします。

このころは戦後復旧に伴い人口の増加と急速経済発展により住宅不足が発生しました。スピードに対応する為に、国の公団が公的な住宅を大規模に展開しました。一方で民間でもこのころから土地と住宅をセットにした建売住宅が大きく建築の内容を変えてきました。
更に住宅の立て方が大きく変わり、面積もコンパクトになり構造的にも簡素化を図り仕上げ材等もそれに準じた簡素化を図ってきました。
コストを下げながら工期も短縮され多くの住宅の生産を可能にしてきました。
また、それに合わせて工期の短縮が図られ現在のようにしっかりとした根拠の元に立てられた工程なら良いのですが、まさしく住まい手を無視をした現場管理横行しました。
家づくりの工程が短縮されそれと合わせて材料の乾燥技術も自然乾燥から人工乾燥に代わり春と秋が建築の時期とされてきたことが嘘のように年中建築が可能となりました。しかし、多くのものを得ることができた半面で多くのものを失ったのも事実です。
結果的に、安かろう悪かろうの建物を多く作ってしまったのも事実で、まさしく、スクラック&ビルドそれは、不幸にも住宅の寿命を縮める事になったのです。私もまだこのころ20代で駆け出しの大工でしたが、大工手間が大きく削られ正当な手間がかけられず、結果的に手抜きが発生して家の価値を下げる現状を見てきました。
高度成長期後の建物は、良い建物も多くありますが、残念ながらそうでない建物も多く存在します。
つまりこの年代以後の建物には、構造的に不安のある建物が存在しており、リフォーム・リノベーションを検討することを、実際に躊躇することがあります。

30年代前半までの建物の魅力

一方で、逆に30年代前半までの建物は、終戦直後の直接の影響による資材不足や職人不足はある物の地方では、伝統工法で建てられた建物が存在しています。戦前もまた町屋も含めこの工法が主流になっていました。
残得ながら現在の新しい耐震基準に適合しないのが問題ではありますが、私の大工としての目線からして信頼が持てる構造で今風のデザイン住宅とは違う美しい古典的な魅力のある建物が多く存在します。

耐震基準が大きな壁

やはり既存の旧規格の建物は耐震基準が大きな壁だと思います。暖かさや涼しさなどの温熱環境に関しては、コスト的な問題が克服できれば、何とかなりますが、一方で構造的な問題になると、お金をかけてもどうしても出来ない部分が生じてきます。
具体的には、まずは基礎構造でしょうか。

証明しづらい基礎構造

基礎から上の部本は補強工事が可能で何とかなるのですが、基礎構造より下の部分はそう簡単にはいきません。特に30年代前半までの建物は、伝統工法にそった建物が多く現在のようなコンクリート基礎ではなく、柱に架かる荷重を直下の地面を地突きをしそこに石を据えて荷重を支える石端建工法で建てられており基礎と土台や柱との緊結がなされていません。こうした建物を、耐震補強するとなると『限界耐力計算方法』による構造計算が必要で、正直なところ現在の耐震基準との相性があまり良く無く私としては安全の保証が出来ません。
しかしそうかといって木組みなど構造的には、しなやかな強さをもった理にかなった構造で大変に魅力的です。
これを言ってしまうと「現在の耐震基準に合わせなければ」と矛盾を感じるかもしれません。ただ大工の勘や経験値などから見れば地震に強く倒れない建物だと思います。繰り返しますが、残念ながら公的に証明することが難しいということだと思います。
よって、こうした建物を耐震診断をすると耐震基準の評点が1を基準として、ほとんどの建物の評点は0.2前後で「倒壊する」の評価が出ます。このことは、新耐震基準の前と後で大きく変わり、国はこの基準前の建物に対して無料で耐震診断を行っています。
昭和56年以後の新耐震基準に対して昭和56年5月までの建物に対してこの枠が適用されます。但しここで気を付けたいのは決して新耐震基準であれば安心とは言えないという事も事実です。国としてはこの年代以前の住宅は倒壊の危険があり「耐震補強をして命や財産を守ってください」と言っているのです。

2000年基準

一方でこの耐震補強も現存の基礎構造によって大きく状況が変わってゆきます。30年以降は、コンクリート基礎の住宅が次第に現れ、布基礎工法による基礎構造が増えてゆきました。但し、この基礎も現在の最新の基礎に比較すると、鉄筋が無かったり地盤の状況が不明であったりします。基礎が現在の最新基準に近い性能になったのは、新耐震基準の2000年基準からでしょうか。

まとめ

さて、ここまで現存の建物の状況について説明してきましたが、要するにまずは現状を確認することが、今後の計画の大きな判断基準だということです。そして、更に今後この建物をいつまでどうようにして住むのかだと思います。

○住まい手の年代や家族構成
1、夫婦と子供2人で住宅を購入後、現在夫婦2人の生活となり老後の為のリフォーム・リノベーション
2、夫婦と子供2人で中古住宅を購入後リフォーム・リノベーション
○将来的に、中古住宅として売却も考えることも視野に入れたリフォーム・リノベーション

ここで、重要なのが現在の住まいが、その計画に適用できるかだと思います。いくら、将来は販売を考えたところでそれに見合った性能やデザインが適応できればいいのですが。そこが、望めない場合は建て替えの選択が正しい判断だと思います。

長く住んできた分、より多くのとても捨てることが出来ない想いや愛着つまり掛け替えの無いその住まい手だけの価値観これを守ることができるのはリフォーム・リノベーションだと思います。

お住いを今後こうしたいと思うときに一度早い段階で専門家に見てもらうのが大切だと思います。

 

青木 茂生

青木 茂生

この記事を書いたスタッフ

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