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和室の減少で気づいた畳の良さ

先日、お客様との仕様決めで、和室の畳のヘリの色を決める際にもう長い付き合いの畳屋さんが持ってきた見本帳。
ずらっと並ぶ見本なのに、ほとんどが廃盤で無いものが多い事。
近年和室が減ってしまい、それと共に畳をいれる機会が大幅に減りその流れでしょう。
さて、言うまでもなく、畳と言えば和風の造りには無くてはならない床材の一つです。
歴史も大変に長く、その畳だけで歴史や文化がわかってしまうほどです。
そこで、今回は床材の選択肢の一つである畳の特徴から、畳の良さを確認していきたいと思います。

畳の特徴について

始めに畳の特徴ですが、そのメリットとデメリットを確認しましょう。

メリット

〇 心材【畳床(たたみとこ)】や一部のヘリは別として表面のイグサは天然素材であり、 環境にも優しく触れたときの何とも言えぬ感触が大変に心地よい事。

〇 畳自体の厚みがあり畳の心材の素材によりますが、適度なクッションが足には大変優しく当たります。

〇 建材の床材と違いしみるような冷たさが少なく、冬でも直接足を置いても環境によりますが、温かさが感じられます。

〇 デザイン的には、ヘリの有り無しとその色や畳を敷く向き、そしてイグサの編み方や色により様々な選択が可能です。

〇 敷く場所や使用頻度にもちろんよりますが、大変に耐用年数も長く心材がしっかりしていれば、表面のイグサだけ張り替えれば(表替え)、また更に寿命が延ばすことが可能です。 我が家の畳は、築40年たちますがまだまだ現役です。

デメリット

● 大きく言えば、施工性が悪い事でしょう。具体的には畳の厚みを選択出来るものの他の床材(フロアー材)等との厚み調整がひと手間必要でまたその継手の見切りにも考慮が必要です。

● 隙間が多いことです。フロアー材と畳、周囲の壁と畳、そして畳とその下地床材、さらに畳どうしにもetc…  この隙間は、このままでは最近の住環境の温熱環境に大きく影響を与えてしまいます。結果的に気流を止めるために工夫と施工が必要となります。

● メリットの中で伝えた畳の寿命。実は人に良い環境が必ずしも畳に良い環境にはならない事です。畳はある程度風通しを顧慮しないと畳の寿命を大きく縮めてしまいます。最近の畳が昔の藁床からスタイロなどにかえているのはこのことも関係しています。

● 畳は自然素材で体に優しいのですが、古くなって処分をするとなるとこの畳はしっかりルールがあり1枚ごとにしかり処分代がかかります。本来、畳のイメージは自然に帰る素材のイメージですが、実は昔の藁の床を使ったものから軽さと断熱性能を求めたスタイロフォームやMDFを使った物が主流となり処分は複雑になっています。

畳の構造は

ここは、大工としての見方ですので専門的にお伝えはできませんが
これまでの経験値でお伝えします。
表は藁で編んだい草を長手方向に敷いて裏まで巻き込みます。
短編方向はその両端をヘリで表のい草を包むように裏側まで伸ばして縫い込んでいます。
裏側は防湿シートを床材と一緒に縦横に縫い込んだ構造床なっています。

また、心材(とこ材)は昔本来の仕上げ厚みも55㎜の藁どこが基本でしたが、次第にスタイロやMDFなどを心材に使い軽量化を図りながら様々な厚みに対応できるようになりました。
また、数寄屋建築(茶室を含む)などでは、木の板に直接い草表を巻き付けたヘリ床式の床板を仕様として使う場合があります。
最近は洋間のフローリングの床に敷くだけの暑さ15ミリくらいの物が多く出回っています。
ネットやホームセンターにも売られ気軽に完成後に和室コーナーが出来ます。

畳の需要はなぜ減ってしまったのだろう

さて次に減少した理由を考えたいと思います。
畳は日本の象徴である和室の代名詞と言っても良いと思います。
それ程のものが、こんなに減ってしまったのだが、
まずは、その畳の歴史を見てみました。

 日本の文化の多くは海外から来たものが多く畳もそうだろうと思っていました。
しかしこの畳に関しては日本固有のものらしく長い歴史の中で確実に使い方や形も変化を続けてきました。
 平安時代までは、床材ではなく、寝具などにも使われるなど、
既存の床などに敷いて使うござのイメージが強かったようです。

 鎌倉時代ごろからはようやく現在のような厚み(約55㎜)のある床材としての使い方が主流となりました。
当時はまだ身分の低い庶民には一般的では無かったようです。
またその頃には、畳は文化の発展に大きく影響を与え
この時代に発展した数寄屋の世界に大きく係わってゆきました。
このころから始まった茶室建築ではこの畳を見事にその世界へ取り入れて奥の深い使われ方をされるようになりました。

 私も、20代のころは、茶道や華道を学んでいましたが、
この畳の構造をそのまま作法に生かした基準が決めらていました。
例えば、畳は表は藁で案でありますが、短手方向に15㎜弱のピッチで編まれていますが、
その数は64目(実際はグリットにより違う)と言われそます。
茶道ではその縫い目の数で座る位置や茶道の道具を置く位置を決めるのに利用されておます。
また畳の淵のヘリもまたその茶道に利用をされてきました。
まさに茶室などの狭い部屋をいかに広くまた美しく使うためにと考え出させた知恵だと思います。

 戦国時代から江戸時代なると、それまでの特別な身分であったり
特別な場所での利用でしかなかった畳が庶民にも普通に使われるようになりました。
このころには人々にとって生活をするうえで畳は無くてはならぬ床材として当たり前に使われてきました。
まさしく畳は、不動の存在になったのだと思います。
 しかし、その後の明治維新とともに明治時代以後になると海外との文化交流が活発となり
座る文化から腰掛ける文化へと大きく生活スタイルの変化の波が訪れ
畳に変わり板張りの床が主流となっていきました。
更に、家族構成も多世代にわたる大家族制から
親子4人、単身1人暮らしなどその構成自体がコンパクトとなり
生活スタイルを大きく変えてしまいました。
それは、最終的に冠婚葬祭のスタイルまで自宅で行わない事となり
畳の代名詞ともいえる和室の必要性を無くしていしまいました。
現在では、一部の住宅のその一部分に使われるだけになってしまいました。
また一般の住宅ではその使い方も先ほど述べた洋間の一部のリビングのカーペットの使い方に近いものになってきました。

まとめ

畳は、長い歴史の中で人の生活に深く係りながら発展をしてきました。
戦後の激しい競争社会や大きな生活スタイルの変化とともに
住宅建築は激しい渦に巻きもまれ大きく変化をしました。
コストの削減や性能の向上のための住環境変化などで
結果として住宅の形は性能とデザイン重視でコンパクト
これが現在の主流
つまり、畳が悪いから減ってしまったのではなく
単純に敷くスペースや経済性も含め人々にゆとりが無くなったからだと思います。
そうかといって日本人は洋風文化に慕っているものの外の履物は玄関で脱ぎます。
そして、床に直接横になったりもしたいです。
そんな時に『やっぱり畳が良いや!』と言うのです。

畳屋さんは,仕事が大きく減りその技術も発揮する場が大きく減りました。
結果的に後継者も育てることが出来なくなっています。
このままでは、畳が見直され畳が欲しくなった時にもう作る事が出来なくなるのかなと思います。
これに関しては、まさしく畳屋さんに限ったことではないのですが?

 すべての物に、長短の特徴は必ずあります。
デメリットを改善しながら利用するのは容易でないと思います。
しっかり、畳の特徴を伝えながら日本の良き文化を絶えることの無いよう
職人の技術の継承を考えた時にここは本当にいい物であればしっかり提案をしてゆく必要があります。

そんな中、畳業者の若手世代は動いているだと気づく場面がありました。
先日も東京ビックサイトでの展示会
たまたま畳屋さんの関連のブースがありました。
なにやら写真を撮って楽しそうに話しています。
聞いてみれば、畳の敷き方(アレンジ)のコンクールとのこと。
若い人には、当然パワーもあり着眼点も先人には見えない多くの可能性を秘めて頼もしいです。
その頑張っておられる姿に私もぜひとも応援をしようと思っています。

ホームセンター等の既製品の薄い畳も良いですか、
地元の職人さんが現場に合わせて1枚1枚作った畳はやっぱり良いです。
畳のある部屋をつくりませんか?

青木 茂生

青木 茂生

この記事を書いたスタッフ

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